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「板金屋」から抜け出せない—葛藤を抱えた経営者が見つけた、自分だけの道

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メーカーになりたい。でも、どうすれば?

「板金屋という営みから、メーカーになりたい」

株式会社ヒラミヤの代表取締役、平宮健美さんは、創業40年の板金・金属加工工場を営む二代目経営者だった。空気清浄機の開発に取り組んだり、デザインフォーラムに足を運んだりしながら、自社商品を作りたいという想いを抱き続けていた。

だが、経営側になりながらも「経営のことをよく分かっていない」という不安があった。モノづくりの現場は熟知していても、これからどう進むべきか、自分の軸が見えない。そんなもやもやを抱えていた2015年、平宮さんはzenschoolの門を叩いた。

「想像もしていなかったもの」が出てきた

初日は、正直「良くなかった」と振り返る。自分の足りない部分が露呈した。「元々根暗なもので、結構自分でがっかりしていく」—そんな瞬間もあった。

しかし、プログラムを通じて、想像もしていなかった発見があった。

「生まれながらに自分が持っているものを本当に引き出せた」 「どうあるべきかという自分の1つの柱、物事の取り組みに対してのブレないものに気づかせてもらった」

それは、自分の中にずっとあったもの。ただ気づいていなかっただけだった。平宮さんは、「私ができる仕事は板金だ」と改めて感じた。そして、「板金を伸ばすためにどうしたらいいのか」という問いが明確になった。

高校時代の同級生との再会が、すべてを変えた

転機は、偶然の再会だった。私立高専のグラフィック工学科で学んだ平宮さん。忘年会で久しぶりに会った同級生は、デザイナーになっていた。

「デザインをするほうは机上でしか表現できないけれど、モノづくり屋はちゃんと形にできる」

その会話から、デザイナーと職人のコラボレーションが始まった。そして2013年、南青山の靴屋「イグアナアイ」の内装プロジェクトが舞い込む。建築家・水谷壮一さんが求めたのは、「原始時代の洞窟」のようなコンセプト空間。それを、アルゴリズミックデザインとポリゴン形状の板金加工で実現した。

わずか2ヶ月の短納期。初めての取り組み。それでも、「できちゃったんですね。自分たちも本当にそうなるとは思ってなかったですけど」。

このプロジェクトは、日本商環境デザイン協会のJCDアワード準グランプリを受賞。商店建築誌の表紙も飾った。何より、「金属で作ってるようには見えない」という反応が、平宮さんの確信を深めた。

モノづくりに熱い人と、出会いたい

イグアナアイの成功後、Google、ナリフリ、メルセデス・ベンツ和歌山など、次々とプロジェクトが舞い込んだ。建築業界での可能性が開けた。

2017年、平宮さんは「3D Architectural Lab」というコンセプトを立ち上げた。キャッチフレーズは、"Passion Of Manufacturing"(モノづくりに熱い人と知り合いたい)。

「デザイナーや建築家の方が、『こうしたい』という想いを形にさせていただければ、それはありがたいお話」

工業製品は完成品の中に隠れてしまう。でも建築空間なら、自分たちの技術と想いが見える形で残る。「作る側も本当に真剣にやらせていただいております」。

11月には、東京ビッグサイトでの新価値創造展に出展を控えていた。ブースデザインは、zenschoolで出会った西村拓紀デザインが手がけ、VRで事前体験もした。既存のお客様の仕事をお断りして、全社で展示会準備に没頭する日々。

「終わった後の達成感というのはとてもうれしいですね」

自社商品。それは、かつて平宮さんが夢見た「メーカー」の姿とは違った。しかし、板金という自分の武器を活かし、熱い想いを持つ人たちと共に空間を創造する—それは、平宮さんが本当に望んでいた道だった。


この物語の続き

平宮健美さんの探求の旅の全編は、noteでご覧いただけます。zenschoolでの対話、デザイナーとの出会い、そして建築業界への挑戦。葛藤から気づき、そして行動へ—その詳細なプロセスを、ぜひお読みください。

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