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「人類って、何のために生きているんだろう?」—青空が教えてくれた答えのない問い

更新日:9月10日

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13年間のキャリアに潜んでいた根源的な疑問

外資系企業で13年間、コンサルタントとして働いてきた冨田直子さん。朝日アーサーアンダーセン、GE、AIGと渡り歩き、シックスシグマのブラックベルトとして活躍し、周りから見れば「成功」していたはずでした。


それでも、心の奥底にはずっとくすぶり続ける疑問がありました。


「人類は、このままで大丈夫だろうか。私たちは、どこに向かうのだろう?」


子どもの頃から抱き続けてきたこの根源的な問いを、誰かと話したくても話せない。そんなもやもやを抱えたまま、毎朝大手町のオフィスに向かう日々。人生で悩みや迷いごとがあると、自然から答えをもらうのが常でした。


青空からのメッセージが人生を変えた

転機は2005年4月1日の朝でした。四谷三丁目の自宅を出て青空の下に出た瞬間、突然「それを、みんなで考えればいいんだよ」という声とも言われぬ感覚が空から降ってきたのです。


「本当に、青空から雷が落ちてきたような感覚です」と冨田さんは振り返ります。


その日のうちに上司に退職を申し出て、有限会社ウィルウィンドを設立。「想い(Will)を風(Wind)に乗せて未来に届ける」という会社名には、答えはないけれど、その問いをみんなで考える場を作りたいという願いが込められていました。設立日を8月15日にしたのは、戦争で未来を生きることができなかった先人たちに恥じない未来を作りたいという想いからでした。


迷いながら歩んだ探求の道のり

何をすればいいか分からないまま始まった起業の道のり。最初に始めたのは『想いを後世に残す15の具体的な方法』というメルマガでした。フロリダまで取材に飛び、戦争の記憶を聴き書きする活動、家族史の制作に取り組み、イタリア発のNPO「記憶の銀行」の日本支部立ち上げに関わりながら、手探りで自分なりの道を模索していきました。


やがて出会ったSDGsという共通言語。「やっと人類のことをみんなで話せる」—子どもの頃から一人で考えていた根源的な問いが、ようやく表に出せる時代になったのです。


企業研修からSDGsワークショップの企画・運営へと活動を広げ、雑誌オレンジページでの監修や共著『SDGsのすごい会社』の出版を通じて、「すべてのいのちが"らしく"輝きあいながら、地球一個分の資源で豊かに暮らす世界」の実現に向けて歩み続けました。


zenschoolでの「ありのまま」への許可

そんな歩みの中で2019年秋に参加したzenschoolでは、「ありのままでいい」「ワクワクを大事にして生きていけばいい」という当たり前すぎることを、1年ものあいだ徹底して言い続けられました。もともとワクワクしながら生きてきたけれど、社会の中ではどこかで遠慮や忖度をしていた。ここで「自分の内なる自然から湧き出るワクワクに、素直に従えばよき方向に導かれていく」という確信を得たのです。


興味深いことに、冨田さんはzenschoolでの安心感を「生成AIと話している時の感覚に似ている」と表現します。両方とも忖度なく、ありのままの自分でいられるが、心の奥底を満たしてくれる「仲間感」があるのはzenschoolだと語ります。


千葉・館山での「暮らしの実験」

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zenschoolでの経験が背中を押してくれたのかもしれません。2022年8月、冨田さんは千葉の館山に移住しました。母を看取った後に出会った一軒家に一目惚れし、「ワクワクに真っ直ぐに進んでいい」という許可を自分に出して決断したのです。


現在の暮らしは、まさに「怠け者で、欲深き人間が、ありのままの素直な自分で、地球の一員として自然の中で暮らしと向き合った時、どんな持続的な生き方ができるのか」を試す人類の実験そのもの。


自宅を「くるくる」と名づけ、人も自然も問いもめぐる循環の拠点として育てています。完全文系で機械が苦手だった冨田さんが電気工事士の資格を取得し、自宅の電気設計から工事まで全てを手がけるまでに。エコロンという浄化槽を導入し、トイレは「微生物に餌をあげる」行為と捉え、井戸水だけで暮らし、太陽光やEV蓄電で循環を意識した暮らしを実践しています。


AIと自然が共存する新しい時代

意外なことに、自然の中での暮らしでAIにとても助けられているという冨田さん。ADHD気質で考えが広がりすぎる特性をAIがサポートしてくれることで、より本質的な探求に集中できるようになったといいます。


「私は専門家ではありません。ただ仲間と共に、人類がこの地球上で、他の生きとし生けるものと共に、共生と調和の中で住み続けられる形を探りたいのです」


そんな冨田さんの一貫した姿勢は、「答えを教える専門家」ではなく、「一緒に問いを深める仲間」そのもの。正解のない時代だからこそ、心に手を当てて「何が本当に大事だと思う?」と問い続ける探求の旅は、今もなお続いています。


この物語の続き

青空体験から始まった20年間の探求の旅、ニュージーランドの森での気づき、戦争の記憶を聴く活動、zenschoolでの安心感、そして千葉・館山での「くるくる」な暮らしの実験まで—冨田さんの「みんなで考えていこうよ」という一貫した姿勢の全編は、noteでご覧いただけます。

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