頭で考える人が、手で作る世界に飛び込んだら起きたこと
- 三木康司

- 8月25日
- 読了時間: 3分

「設計した機械が全然動いてくれない...」
京都大学大学院で哲学を専攻していた野末雅寛さんが、富山県で父と共に製造業の会社を立ち上げてから数年。理論と現実のあまりのギャップに、彼は深く悩んでいました。
哲学の世界では、思考の中で完璧に組み立てられた理論も、現実の製造現場では「予想もしないことが次から次と起こる」のです。現場のベテランが使う専門用語は「外国語を聞いているよう」で、頭で理解することと、体で感じることの間には、想像以上の隔たりがありました。
二つの世界を生きる葛藤
大学院を中退し、故郷富山に戻って父と共にイージー・エンジニアリングを創業したのは2004年。自動機・省力化機械の開発という、まさに「理論を現実化」する仕事に従事しながらも、野末さんの心の中には常に、かつて探求した哲学への想いが渦巻いていました。
「ワクワクと現実を分離させていた」と振り返る野末さん。エンジニアとして機械を作る日々と、哲学者として思考を深めたい気持ち。二つの世界の間で、彼は長年、静かな葛藤を抱え続けていました。
3Dプリンターとzenschoolが運んだ転機
転機は2015年末。仕事の受注が一時的に落ち着いた時期に、野末さんは3Dプリンターの開発に着手します。そして、この技術をビジネス展開できないかと調べる中で、enmonoとzenschoolの取り組みに出会ったのです。
「ワクワク起点」「主観的に内観することによって、ビジネスの種を見る」というアプローチ。哲学を学んできた野末さんにとって、これは心から共感できる方法論でした。
zenschool富山の第1期生として参加した野末さん。プログラムの中で生まれたのが「越中富山の置き3Dプリンター」というアイデアでした。富山の伝統である「置き薬」をモチーフに、3Dプリンターをお客様の現場に設置し、対話を通じてカスタマイズしていく事業構想。
「その瞬間、テンションが上がっちゃった」と野末さんは当時を振り返ります。
哲学カフェという新しい実践
zenschool卒業後、野末さんの行動は加速します。同期の梶川さんが運営する美術館で「哲学カフェ」を主宰。「人工知能時代の仕事」といった現代的なテーマで、毎回10数名が集まる対話の場を創造しました。
「夢と現実を分けていたところが、だいぶ融合してきた」
エンジニアリングの現場で培った技術力と、哲学で磨いた思考力。二つの世界が交差する地点で、野末さんは新しい価値創造の可能性を見出していました。
工場から生まれる未来への問いかけ
インタビュー当時の野末さんは、3Dプリンターの特注開発、哲学カフェの運営、そして本業の製造業と、まさに「哲学するエンジニア」として多面的な活動を展開していました。
「グローバルな技術をどうローカライズして現場に落とし込めるか。そこに日本の強みがある」
彼の言葉には、単なるエンジニアでも研究者でもない、「考える実践者」としての確信が込められていました。
この物語の続き
野末さんの探求の旅の全編は、noteの詳細記事でご覧いただけます。 👉 野末雅寛さんの完全インタビュー記事はこちら
哲学と製造業という一見異なる世界を橋渡しした彼の軌跡から、きっとあなた自身の「問い」が見つかるはずです。
















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