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言葉にはできない幸せがある

更新日:2 日前

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大藪めぐみさんの歩み —原体験から「本気の遊び」へ


探求の始まり

大藪めぐみさんがzenschoolの門を叩いたのは、直感的な感覚からだった。「よく分からないけれど楽しそうだな」—その単純で純粋な想いが、彼女の人生に大きな変化をもたらすことになる。


ご主人が先に受講されたことで、「先に行かれた」と感じ、自らも参加を決意。東京での小畑さんの発表を見た懇親会で、いつの間にかご主人と三木さんが握手をしている光景を目にした瞬間、「私もやりたい」という想いが確かなものになった。


ワクワクトレジャーハンティングでの転換点

zenschoolでのワクワクトレジャーハンティングチャートに向き合ったとき、めぐみさんは重要な転換点を迎えた。


縦軸に子どもの頃の思い出、横軸に自分の技術として、最初は家業のゴム成型に注目していた。しかし、それを語る彼女の表情は次第に曇っていく。そのとき、宇都宮さんが迷いなく「ゴム成型は×にしよう」と言い、実際に×印を書いてくれた。


「×にしてはいけないとたぶん思ってたから、そこを躊躇なく『はい、じゃあゴム成型は×ですね』って×ってやってくれたところから吹っ切れた」


その瞬間、長年封印していた子どもの頃の原体験が溢れ出した。家業への固定観念から解放された瞬間だった。


原体験という宝物の発見

めぐみさんの心に蘇ったのは、生まれ育った家の周りの庭や畑、田んぼでの記憶だった。畑に穴を掘ってその中に入ったり、牛にあげる牧草に飛び込んで遊んだり、おばあちゃんが燃やす枯れ草を見つけてはダッシュで駆け寄り、色んなものを燃やして楽しんだ日々。


特に印象深いのは、牧草畑にボーンと飛び込んだときの感覚だった。「気持ちいいから入ろうよ」と友だちを誘い、みんなでゴロゴロと転がりながら、自分で踏んだ牧草の青臭い匂い、空の青色、風のサワサワという音を全身で感じた瞬間。


めぐみフィールド—最初の挑戦

その原体験から生まれたのが「めぐみフィールド」—大地の原体験を通して、心と体を解きほぐすプログラムだった。


「私の子どもの頃の体験が、今の私を作っている核になっているのは確実だなって思っていて、今の社会で毎日一生懸命辛いながらも耐えて、社会に出て毎日同じ繰り返しをしている心の中で辛いものを持ってる人達が、少しでもそういう原体験を通じて心を開放して、本当の大切なところ、人らしさを取り戻してもらえたらな」


彼女が大切にしていたのは、「言葉にはできない幸せ」だった。「風があなたを包む瞬間を知ってる?火の温かさが心の温かさになった瞬間を知ってる?森のエネルギーが自分のパワーになった瞬間を知ってる?そのすべてを感じた時、言葉にはできない幸せがある」


新たな舞台への展開—「くだらないものグランプリ」

めぐみフィールドで培った「人らしさ」への想いは、やがて新たな形で開花することになる。2020年、コロナ禍という困難な状況の中で、めぐみさんは家業のダイワ化工の取締役として、「俺らFactory Man」という町工場のグループを結成。そして「くだらないものグランプリ」という前例のないイベントを立ち上げた。


このイベントは、モノづくりのプロが自社技術を駆使して「くだらなくて笑えてしまう一品」を本気で製作し、「くだらないもの日本一」を決めるコンテスト。「捨てづらいゴミ箱」「おにぎりの具を抜く機械『グナッシ~』」「戦う三輪車」など、技術力の高さとユーモアが融合した作品が次々と生まれている。


「人らしさ」の新たな表現

めぐみさんが語る開催の背景には、zenschoolで芽生えた「人らしさ」への深い想いがある。


「コロナ禍が落ち着いて仕事が戻ってきたとしても、"単価の叩き合いで仕事を取っていく"、"図面が送られてきて、メールだけの淡々としたやり取り"…。そんな状況に『これってものづくりと言えるのか。つまらんよな~』という話になりました」


効率性と合理性が重視される現代において、めぐみさんが求めたのは「本気の遊び」だった。「町工場が本気の遊びをしたら?」—それを実現したのがくだらないものグランプリだった。


継続する探求の旅

2024年には第5回を迎える「くだらないものグランプリ」。愛知、岐阜、大阪、東京、富山など全国の町工場が参加し、その規模は年々拡大している。


「『くだらなさ』の裏には町工場の技術と情熱が凝縮されている」とめぐみさんは語る。完璧を求めがちな現代社会において、「くだらないもの」作りに真剣に楽しんでいる町工場の姿を通じて、日本中が笑顔になってほしい—そんな想いが込められている。


zenschoolからの学びが息づく現在

めぐみフィールドで体験した「ネイチャーコーミング」—自然の落とし物に美しさを見つける感性は、「くだらないものグランプリ」でも活かされている。どんぐりの帽子に興奮し、松ぼっくりの形の違いに心を動かされたあの感性が、今は町工場の技術力の中に隠された「美しさ」や「面白さ」を見つける力となっている。


「これって"人らしい"っていうことにこだわりがあるんだなっていうことに最近気づいて」


—zenschoolで得たこの気づきは、現在もめぐみさんの活動の核心に息づいている。


現在の大藪めぐみさん

  • ダイワ化工株式会社 取締役

  • 「俺らFactory Man」代表

  • 「くだらないものグランプリ」主催者

  • 全国の町工場とのネットワークを通じて、ものづくりの魅力を発信し続けている


関連リンク


この記事は2019年のインタビューと、その後の公開情報を基に作成されました。

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