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「人はなぜ移動するのか?」— 1年間の問いから生まれた空飛ぶ革命

更新日:2 日前

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大企業のサラリーマンから、空飛ぶクルマの開発者へ

2019年の暑い夏の日、zenschool(ゼンスクール)第18期生としてプログラムに参加していた福澤知浩さんは、自分でも予想していなかった言葉を口にしていました。


「素直に生きられるようになった」


トヨタ自動車で7年間、調達部門のエンジニアとして働いていた福澤さん。一見順風満帆なサラリーマン生活を送っていましたが、心の奥底では「本当に自分がやりたいことは何なのか?」という問いが静かに響いていました。


その答えを見つけるきっかけとなったのが、同僚たちと始めた小さな有志活動「CARTIVATOR(カーティベーター)」でした。2013年、愛知県豊田市で開催された合宿で、仲間たちとひたすら語り合ったテーマは「人はなぜ移動するのか?」。1年間の議論の末に辿り着いた答えが「空飛ぶクルマ」だったのです。


もやもやからの出発

「元々、サラリーマンになることが夢だった」と語る福澤さん。父親が楽しそうに働く姿を見て、自分も同じ道を歩みたいと思っていました。しかし、空飛ぶクルマの開発に関わる中で、次第に違う世界の人たちと出会うようになります。


「何でもやってる」「好きなことをやってる」という自由な人たちとの出会いが、福澤さんの心に小さな変化をもたらしました。「あなた達ができるなら僕もできるんじゃないか」という思いが生まれ始めたのです。


そんな時期にzenschoolと出会いました。「ちょっと高いな」と思いながらも、「人生のためならば値段は関係ないだろう」と決断したのは、心の中で何かが動き始めていたからでした。


zenschoolでの気づき

「zenschoolの良い点でもあり悪い点でもあるのが、結局何に効いているかよく分からないこと」と福澤さんは振り返ります。「でも、受講前と後で圧倒的に違うことがある。たぶんそれはzenschoolのおかげだろう」。


最も大きな変化は、「素直に生きる」ことができるようになったことでした。営業では無理に商品を売ろうとせず、「互いに素のままがベストだと思える相手と一緒にやる」という自然な姿勢に変わりました。心地よく、楽な形で生きることができるようになったのです。


この内面的な変化が、その後の大きな決断を支えることになります。


夢を現実にする勇気

2018年、福澤さんは有志団体から株式会社SkyDriveを設立し、CEOに就任しました。「責任が重い、眠れない」といったストレスではなく、「責任が重いからきちんとやらなきゃ」という前向きな気持ちで会社経営に取り組むことができたのは、zenschoolで培った「素直さ」があったからです。


「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」というミッションを掲げ、空飛ぶクルマの開発に全力で取り組む福澤さん。2020年8月には日本初となる有人飛行に成功し、世界から注目を集めました。


2025年、夢が現実になる時

そして2025年8月、大阪・関西万博の会場で、ついにSkyDriveの空飛ぶクルマ「SD-05」がデモ飛行を披露しました。吉村大阪府知事をはじめ、多くの関係者が見守る中での成功は、10年以上にわたる挑戦の一つの到達点でした。


「実際に見て、空飛ぶクルマは空の移動革命になると確信しました」と語った吉村知事の言葉は、福澤さんと仲間たちが信じ続けてきた未来への確信を裏付けるものでした。


現在、SkyDriveはOsaka Metroとの提携により、2028年の商用運航開始を目指す「大阪ダイヤモンドルート構想」を推進しています。新大阪・梅田、森之宮、天王寺・阿倍野、ベイエリアを結ぶ空のネットワークで、人々の移動を革新する計画です。


歩んできた道のりに、無駄はない

振り返ってみると、トヨタでの調達業務の経験、仲間たちとの議論、失敗や試行錯誤の日々、そしてzenschoolでの内省の時間。すべてが今の福澤さんを形作る大切なピースでした。


「私は渋滞や満員電車、複雑な乗り換えといった2次元の移動につきまとっているムダをなくしたい。3次元の世界で行きたい場所へ素早く、かつ楽しく移動できる世界を実現したい」

福澤さんの言葉には、単なる技術的な野心を超えた、人々の生活をより豊かにしたいという純粋な想いが込められています。


有志の力と企業の力を結ぶ

SkyDriveの特徴の一つは、有志団体CARTIVATORと株式会社SkyDriveが連携している点です。「感謝のループ」という言葉で表現されるように、異なる立場の人々が互いを尊重し、共通の目標に向かって協力する組織文化を築いています。


福澤さんがzenschoolで学んだ「対話」の力が、ここでも活かされています。定期的な対話セッションを通じて、「どういう世界を創りたいのか?」という問いを共有し、チーム全体の方向性を揃えているのです。


これからの道のり

空飛ぶクルマの実用化は、まだ始まったばかりです。技術的な課題、法整備、社会受容性の向上など、乗り越えるべき壁は数多くあります。それでも福澤さんは、「課題解決」ではなく「世界創造」の視点を持ち続けています。


「空飛ぶクルマが当たり前になった世界はどんな世界だろう?」「人々はどんな気持ちで空を移動するだろう?」


そんな問いを大切にしながら、一歩ずつ未来に向かって歩み続けています。


福澤知浩さんの歩みは、「もやもや」を抱えた一人のサラリーマンが、自分の心と向き合い、本当にやりたいことを見つけ、それを形にしていく物語です。技術者としての専門性と、起業家としてのビジョン、そしてzenschoolで培った「素直さ」と「対話力」を武器に、100年に一度のモビリティ革命の最前線で活躍し続けています。


現在、SkyDriveは世界5カ国からプレオーダーを受けており、2028年の商用運航開始に向けて開発を加速しています。福澤さんの挑戦は、多くの人に「不可能を可能にする勇気」を与え続けています。

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